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CASSIN RIDGE MAGAZINE 創刊



私たちがブランドを創っていくにあたり、大切にし、根本に据え、芯にしている考えをここに記す。


私たちは、”川上から川下を透明化”すること自体を、必ずしも目的にはしていない。それは、原産地の情報や、生産者の顔を見せるということを前面に押すようなブランドにはならないということだ。私たちは、これらの”透明化”をマーケティングのカードの切り札として使うことはしたくはない。


アパレルブランドは、製品が出来上がるまでの過程が、あまりにもブラックボックス化している。その結果、その途中にある悲惨な労働環境を改善することや、顔が見えなかった生産者にスポットライトが当たること自体が、マーケティングの”ネタ”になっている。それを前面にアピールすることで、消費者がエシカル(倫理的)な消費ができている、と感じさせることができていた。


それが悪い動きだとか、間違った方法だとか言うつもりは微塵もない。そもそも、その動きがなければ、人々がエシカルな消費そのものを認知することはできない。だから、多くの企業が透明化に動く流れはとてもポジティブだ。私たちが言いたいこと、それはもっとこの透明化が当たり前になる社会にしていく必要があるということだ。


私たちはそもそも、アパレルブランドはその川上から川下までの過程を透明化することが”義務”だと信じている。義務である以上は、それをアピールすることは”なんか違う”という感覚だ。だからこそ、これを買えばあなたもエシカルな消費ができますよ、ということをわざわざ言いたくはない感覚がある。


時代は変わってきている。世界の”発展”をこれまで支えてきた大量生産大量消費には、これまでとは違った目を向けられはじめている。製品が安く買い替えが可能であることは、自分にとっての恩恵だけがあって、地球には恩恵がないことに人々は気づきはじめている。エシカルな消費が浸透しつつある時代に変わってきている。各企業が透明化をアピールしているおかげで、社会にその発想が浸透しはじめている。これまでの消費って実は良くなかったんじゃないかと人々は気付き始めている。


だからこそ私たちは思う。ブランドによって”透明化”がアピールされうる以上、その考えはいつになってもすみずみまでは浸透しないだろうと。当たり前であることは、当たり前ゆえアピールされない。他とは違うからこそ、アピールポイントになるのだ。地球・社会・環境に良い生産は、”普通”ではなかった。だから、それをアピールすれば、”売れる”という感覚を持つことも十分理解できる。ただ、私たちは、それを前面に押すブランドに留まりたくない。もっと根本の文化から変革し、その感覚が前時代的なものだったと思える時代へと推進していくブランドでありたい。


そのために、私たちはTHE CASSIN RIDGE MAGAZINEをはじめる。それぞれの商品が持つこだわりや生産者や私たちが持つストーリーを、文字として細部まで記していく。それを読んでブランドへの理解やジーンズへの愛が深まってくれるのならば、たしかに嬉しい。ただ、冒頭でも言ったように、私たちは”川上から川下を透明化”すること自体を目的としていない。


私たちは、利益を得るためにTHE CASSIN RIDGE MAGAZINEをはじめるわけではない。私たちは、文化を創るためにTHE CASSIN RIDGE MAGAZINEをはじめる


“透明化”が当たり前の文化になるまでは、簡単な道ではないだろう。私たちがこれから進む道は、アラスカのマッキンレー山(デナリ山)に続く世界最難関の尾根、CASSIN RIDGEのような道だ。長く、険しく、苦しい道だ。そんな道だからこそ、一緒に歩いていくことに意味がある。一人では行けない道は、多くの同志たちと歩いて行けば、乗り越えることができると信じている。


Text by ジュンヤスイ(@jjyasui